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情報銀行の可能性と未来とは?

情報銀行の可能性と未来とは?

年齢や生活状況といった「個人の属性」と、その属性を持つ人々の「行動情報」は、企業のマーケティング活動において貴重なデータとなります。そうしたデータを扱う「情報銀行」の運用が、すでにいくつかの企業によってスタートしました。
個人の情報を第三者企業に提供する情報銀行のサービスのしくみとメリットのほか、課題や問題はないのか、詳しく解説します。

目次
情報銀行とは?
なぜ情報銀行が必要なのか?
情報銀行によるビジネスの可能性と未来
始まったばかりの情報銀行の課題は?
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情報銀行とは?

情報銀行とは、総務省が発表した定義「情報利用信用銀行」の略称です(総務省「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」2018年5月)。個人から預かった個人データを、その個人の同意する範囲内で運用し、その情報を必要とする事業者に提供して対価を得て、そこから得られた便益を還元する組織のことを情報銀行といいます。
すでに私たちは、日常的にさまざまな事業者に個人データを預けています。IT企業や金融機関、携帯キャリア、通販サイト、動画配信サービスなどなどです。これら、各事業者の持っている個人データは、通常ならその企業内でのみ利用されるものです。
しかし、各事業者がそれぞれの分野で蓄積している膨大な量のデータを統合したらどうなるでしょうか。例えば、「大都市部に住む30代独身男性が通販で日用品をまとめ買いする」「20代未婚女性は動画配信サービスで海外ドラマを好んで視聴する」といった情報は、他の多くの事業者にとって効果的なマーケティングを行うための有益な情報となります。
こうした個人データは数が多くなればなるほど、利用の精度は高まっていきます。いわゆる「ビッグデータ」ですが、個人データを預かりビッグデータとして、各企業に提供し有効活用できるようにするために、情報銀行が構想されたのです

PDS(Personal Data Store)とは?

2017年5月、日本で「改正個人情報保護法」が施行されました。この改正法によって個人情報の範疇が、明確に定義されました。それと同時に、個人を識別できる情報を排除した「匿名加工情報」を制度化し、第三者へ提供する「オプトアウト」の手続きも厳格に義務付けられました。この改正法によって、個人情報の流通の道が開けたといえます。

しかし、個人情報に含まれる属性情報や行動情報は、元々一個人のものです。それを「本人の同意のもとに」情報銀行に提供し、便益を受け取るには、そのためのしくみを用意しなくてはなりません。そこで検討されたのがPDS(Personal Data Store)です。

PDSは、個人が自分の個人データを管理するためのプラットフォームです。自分の個人情報を集約・統合し「自分発のデータをどの組織にどのように提供するか、あるいはしないか」を情報銀行に指示し、それによって得られた対価を受け取るための基幹システムとなります。また、情報の受託者は、PDS上での指示を受けて、該当するデータのみを外部の利用者に提供します。
このPDSが機能することで、個人の属性や行動履歴を含む個人データが流通し、活用される基盤ができるのです

■情報銀行のイメージ

情報銀行のイメージ

本人には便益が還元されず、社会全体にのみ便益が還元される場合もある。

なぜ情報銀行が必要なのか?

個人データがマーケティングなどに利用できることはご説明しましたが、では、なぜ日本では情報銀行という組織が必要となるのでしょうか?

2010年頃からのスマートフォンの急速な普及や、各種のITサービスの増加などによって、非常に多くの個人データが各企業に蓄積されていきました。アメリカのGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表されるIT企業や金融機関などでは、多くの個人情報が集積しているうえ、決済というプロセスを手掛けることから、企業にとって有益な行動情報が膨大に蓄積されています。
これらの個人データは、住所、氏名のほか、職業、年齢などの属性情報、通販の購入履歴やアプリのダウンロード履歴などの行動情報まで、数多くのデータを含んでいます。こうした個人データを個人の了承のもとに流通させ、他の企業でも活用できるようにすれば、ビジネスを効率化でき、経済の活性化が図れます

すでに中国や欧米各国には、個人データを経済活動に活用するしくみがあります。しかし、それらの制度は各国で微妙に性格が異なり、EUではプライバシーの保護に重点を置いた制度、中国では膨大な情報の活用を重視した制度となっています。アメリカでは、GAFAを中心に企業が個人データを多く蓄積しているため、その取り扱いが問題にもなっています。
日本では、個人データそのものの流通が盛んではなく、商業利用に対する警戒心が強くありました。そこで、プライバシーを最大限に保護しつつも、データの流通性を高めて企業活動の活性化を図るという方向性をとりました。それを実現するためには、個人が自分の情報を管理し、提供先を吟味し、ポリシーに沿って提供することが必須ですが、その作業を個人レベルで行うのは無理があります。そこで、個人の預託を受けて、作業を代行する情報銀行が必要ということになったのです。

情報銀行が持つ5つの役割

情報銀行は、個人データを流通させる要となる組織となります。そのおもな役割としては、次の5つです。

<情報銀行の役割>

  • 個人データは安全な環境で保管する
  • そのデータは預託者個人のものであることを明確にする
  • 第三者に提供したデータがどこでどのように使われているかを明らかにする
  • データの用途は預託者が選択し決定できる
  • データの活用で得た便益は預託者に還元する

まさに、銀行業務そのものに似ていますが、個人データの使用範囲などに関しては、預託者の力を強めている点が特徴です。

情報銀行によるビジネスの可能性と未来

情報銀行に集積される膨大な個人データは、今後のビジネスをさらに加速させる可能性が期待できます。情報銀行が正しく機能することで、業種の異なる多くの企業が大きな恩恵を受けることが予想されます。
そこで、具体的にどのようなビジネスの可能性や未来が期待できるのかを考えてみましょう。

One to Oneマーケティングが加速する

B to Cのビジネスを展開する企業にとっては、自社の顧客になりうる個人の趣味指向や行動パターンを知ることは、非常に大きな意味を持ちます。個人の動向に最適化したマーケティング活動を行うことで、自社の商品やサービスをより効果的に訴求でき、販売につなげることができるからです。
こうした個人に合わせた「One to Oneマーケティング」では、いかに詳細な個人の行動データを集められるかが肝要です。もちろん大企業であれば、それなりの量の情報をすでに蓄積しているはずですが、新規参入のベンチャー企業や異分野から参入する企業などにとっては、マーケティング施策の精度をより高め、効率化をもたらす参考データとなります。
情報銀行が機能し、これまであちこちで別々に保管されていた個人データが集約・統合されて流通するようになれば、One to Oneマーケティングは一気に加速します。企業のマーケティング効率は飛躍的にアップし、経済の活性化も望めるのです。

参入企業により幅のある情報がシェアされる

情報銀行は、日本IT団体連盟の審査・認定により決定されます。金融機関や情報通信企業などの参加が想定されますが、どのような企業が手掛けるかによって個人データの幅も変わってきます。そこで、参加を検討している企業、参加が期待される企業について考えてみましょう。

・金融機関

多くの個人データが集まる金融機関には、決済のプロセスを手掛けることから、マーケティングに有益な情報が大量に蓄積されています。情報銀行を運用するには、まさに適格でしょう。
すでに2019年6月の時点で、三井住友信託銀行が情報銀行の第1弾の認定を取得しています。また、三菱UFJ信託銀行もPDSの構築を進め、プラットフォームの実証実験に入っています。

・広告会社

広告会社も、マーケティング面での強みとあらゆる業界とのつながりを持つため、情報銀行の運用には適任でしょう。業界最大手の電通グループは、2019年7月に情報銀行サービス「MEY」をスタートし、一般ユーザー向けのスマホアプリもリリースして、ユーザーと企業が参加するトライアル企画を実施しています。

・複数社による運用

複数の企業が連携して情報銀行を作る動きもあります。例えば、日立製作所と東京海上日動火災保険、日本郵便などの6社が共同し、情報銀行の実現に向けた実証実験を2018年9月にスタート。家庭での電力消費量、1日の歩数などの活動量などから、家電向けの保険商品の開発、在宅率に合わせた配達ルートの構築など、参加企業が情報を有効に活用できるしくみを摸索しています。

このように、さまざまな分野の企業が自社の強みや得意分野を活かすことで、それぞれ性格の違う情報銀行が登場することになりそうです。

始まったばかりの情報銀行の課題は?

情報銀行は、ようやくサービスが始まったばかりです。今後も手続きや方向性などを摸索しながら発展していくものと思われますが、現時点で課題や懸念がないわけでもありません。

例えば、EUの「一般データ保護規則(GDPR)」には「データポータビリティ権」が定められていて、自身の個人データを持ち出し、他のサービスへ移転することができます。また、当初の目的上、不要となったデータについて削除を請求することもでき、個人のデータを自身でコントロールする権利があります。

日本ではこれらについて、まだ検討を進めている段階です。つまり、個人がみずからの個人データを情報銀行に寄託しても、完全に自分でコントロールできないということにもなります。日本人は、個人情報が勝手に第三者へ提供されることには否定的です。また、情報銀行から還元されるインセンティブが不十分であれば、そもそも登録しようとも思えず、個人データが集まらないということにもなりかねません。

しかし、これらの課題が解決できれば、プライバシーの保護と情報の流通を高レベルで両立することができるかもしれません。制度面と運用面のそれぞれで改良されていけば、情報銀行は私たちの生活をさらに便利で豊かなものに変えていってくれるでしょう。

本コラムの内容は、筆者の個人的見解に基づくものです。

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