税務
法人税法とは?経営者が知っておきたい法人税の種類と計算方法を解説
会社経営のために「法人税法」を知っておきたいと思いながらも、専門用語が多すぎてあきらめているという人は多いでしょう。
ここでは、経営者が知っておきたい法人税法と法人税について解説します。
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法人税法とは?
法人の所得にかかる税金である法人税について、さまざまな取り決めを定めた法律を法人税法といいます。つまり、法人税法には、法人税を納付するという義務を果たすために、最低限知っておくべき情報が網羅的に記載されていると考えればいいでしょう。
法人税法第一条には、同法の趣旨が以下のようにしるされています。
「この法律は、法人税について、納税義務者、課税所得等の範囲、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続き並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする」
法人税法では、課税所得を計算し、納付するためのルールが非常に細かく定められていますが、毎年のように改正されたり、臨時の措置がとられたりします。企業としては、税制改正大綱を確認し、業務に影響のあるポイントを押さえて把握しておく必要があります。
法人税法の内容をチェック!
法人税法には、法人税の種類や納税の対象者について記載されています。法人税法の内容について、チェックしていきましょう。
法人税の種類
法人税法では、法人税は以下の3つに分類されています。
・各事業年度の所得に対する法人税
一般的に法人税として認識されているのは、「各事業年度の所得に対する法人税」でしょう。毎年、法人の事業活動の所得に対して税金がかけられます。
・各連結事業年度の所得に対する法人税
「各連結事業年度の所得に対する法人税」は、グループ企業全体で法人税を申告する場合に適用される「連結納税」と呼ばれるしくみです。
・退職年金等積立金に対する法人税
「退職年金等積立金に対する法人税」は、退職年金業務等を営む信託会社や保険会社などに対して課される法人税です。法人が、雇用する従業員の退職年金として払い込んだ掛金は、信託会社や保険会社では、払込みをした年度に計上されます。しかし、実際に課税されるのは従業員が退職して年金を受け取ったときになります。退職年金等積立金に対する法人税は、このタイミングのずれに対して課せられる法人税で、「特別法人税」とも呼ばれます。
納税の対象
法人税法では、法人税の納税義務がある対象を規定しています。法人税法上の法人とは、国内に本社、またはおもな事業所を持つ「内国法人」のことです。法人の種類によって、法人税の課税対象か否かが決まります。
法人税の計算
法人税法には、法人税を算出するための計算ルールが記載されています。
申告や納付の流れ
法人税の申告や納付の流れについて、法人税法に記載されています。
法人税の納付期限は、事業年度が終了した日の翌日から2ヵ月以内と決められています。3月決算の場合は5月末までに法人税などの確定申告書提出、および法人税の納付を済ませる必要があります。
法人税の確定申告は、株主総会で承認を受けた決算書を基に行う必要がありますが、3月決算で6月に株主総会を行っている場合、申告期限に間に合いません。こうした場合は、申告期限を1ヵ月延長することもできます。
外国法人について
法人税法には、「外国法人」についても記載があります。外国法人とは、外国法に従って設立された法人のことです。外国法人のうち、法人税を納める義務があるのは、国内源泉所得を有する法人です。細かな課税のルールは、恒久的施設の有無と国内源泉所得の種類に応じて規定されています。
法人税の特徴とは?
法人税とは、利潤を追求する会社が事業によって得た所得に対して課される税金です。
法人税の一番の特徴は、直接税であるということです。税金の納付方法には、納税者(税金を納める人)と担税者(税金を負担する人)が同じである「直接税」と、納税者と担税者が異なる「間接税」があります。間接税は、商品やサービスの売価に上乗せされた税額を担税者が買物の際に支払い、納税義務者が国や地方自治体に納めるもので、消費税や酒税、石油石炭税などが代表的です。一方、法人税は直接税なので、法人がみずから納める税額を計算して申告し、納付まで行わなくてはなりません。
また、法人税は「黒字の所得」に対して課税されるものであり、赤字の場合は納める必要がありません。従って、税収の多寡は景気などに大きく左右されることになります。
ちなみに、法人の所得に対して課される税金には、法人税のほか法人住民税と法人事業税があります。法人税は「国税」であり、法人住民税と法人事業税は「地方税」であるという違いがあります。
法人税が課される法人・課されない法人
法人にはさまざまな種類があり、その目的や特性によって、法人税が課される法人と課されない法人に分かれます。
法人税が課される法人
法人税が課されるのは、普通法人と協同組合等です。
・普通法人
普通法人とは、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、医療法人、相互会社、企業組合、日本銀行などを指します。
原則として、すべての所得に対して法人税が課税されます。ただし、期末資本金が1億円以下の中小法人等に対しては軽減税率が適用され、税負担が軽減されています。
・協同組合等
協同組合等は、農業協同組合、漁業協同組合、信用金庫、労働者協同組合などを指します。
労働者個人や中小企業家が共通の目的のために集まり、共同で設立・運営する組織です。原則として、普通法人と同様にすべての所得に対して法人税が課税されますが、軽減税率により税負担が軽減されています。
法人税が課税されない法人
法人税の課税対象外となるのは、公共法人、公益法人、人格のない社団等です。
・公共法人
公共法人とは、地方公共団体、金融公庫、国立大学法人、地方独立行政法人、日本中央競馬会、日本年金機構、日本放送協会などを指します。
社会のために公益事業を営んでいる組織で、特定の人や法人に特別な利益を与えないことが認定されている公共法人は、税制優遇を受けることができます。そのため、公共法人には法人税が課税されません。
・公益法人
公益法人とは、社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人などを指します。
営利を目的として利潤を追求する普通法人とは異なり、宗教、慈善、学術といった公益に関する事業を行うために設立された組織です。原則として法人税は非課税ですが、「収益事業」から生じた所得は課税対象となります。収益事業とは、法人税法で34の事業が規定されており、物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業などが該当します。
・人格のない社団等
人格のない社団等は、PTA、マンションなどの管理組合、研究会、同窓会などを指します。法律上の法人ではないものの、税法上は法人としてみなされる組織です。
原則として非課税ですが、公益法人と同様、収益事業から生じた所得は課税対象となります。
法人税の計算方法
法人税の計算式は下のようになります。
法人税額=課税所得×法人税率-控除額
法人税額は、各事業年度に得た所得に法人税率を掛け合わせて計算します。課税所得は、「益金」から「損金」を差し引いて求めます。
益金と損金は税金用語で、会計でいうところの「収益(売上)」「費用(経費)」のようなものです。会計は適正な損益計算を目的としているのに対し、法人税法は公平な課税を目的としているため、益金と収益、損金と費用は、必ずしも一致するものではございません。
課税所得=益金-損金
- 益金:税法における収益・売上のこと
- 損金:税法における費用・経費のこと
次に、税率についてです。
一般的に、法人税における税率は、法人の実質的な所得税負担率を指す「実効税率」が使われます。実効税率は、法人税、住民税および事業税の所得に対する税率を合計したものです。
資本金の額が1億円以下の中小法人等は、1年の所得のうち一定の金額までは税率が軽減されるなど、法人の種類と規模によってさまざまな優遇措置があります。
詳しくはこちら
法人税の節税方法
法人税法のルールを踏まえた上で、法人税の節税方法についてご紹介します。
損金に算入されるものを増やす
法人の課税所得は、「益金-損金」で計算されます。そのため、損金に算入される金額が増えると所得が減り、税額も減ることになります。損金を増やすには、以下のような方法があります。
・赤字を繰り越す
法人税法において、赤字の事業年度と黒字の年度の所得を相殺して計算することが認められています。ただし、青色申告の承認を受けている必要があり、赤字を繰り越しできる期間には限りがありますので注意が必要です。
・社員旅行の費用を損金として処理
慰安を目的とした社員旅行や運動会などの費用は、損金として処理することができます。税務調査が入ったときのことを考えて、実施した年月日や参加メンバー、費用、場所などを書面に記載しておきましょう。
・生命保険料を損金として計上
生命保険料や中小企業倒産防止共済に加入すると、全額もしくは一部を損金として計上できます。中小企業倒産防止共済とは、取引先の企業が倒産した場合、中小企業が連鎖倒産しないようにするための制度です。掛金は、損金として処理することができます。なお、中小企業は、積み立てた掛金の10倍(最高8,000万円)まで、無担保・無保証人で借入れできます。
・在庫を整理する
商品の在庫を廃棄した分は、損金として計上できます。廃棄した場合には、廃棄証明書など、処分した事実を税務署などに証明できるようにしましょう。
・決算賞与を未払い費用として計上する
従業員への賞与は支給時に経費として計上されますが、以下の要件を満たしている場合、当該事業年度において未払い計上することができます。
<未払い計上できるケース>
- 決算期末までに、賞与支給額を各人別、もしくは支給を受ける社員全員に通知している
- 通知した金額を、翌事業年度が開始した日の翌日から1ヵ月以内に賞与を支払っている
- 支給額について、通知した日が属する事業年度内に損金処理をしている
ただし、支給日に在籍していることを賞与支給の条件としている法人において、通知日から支給日までの間に退職した社員がいる場合、未払い賞与の全額について損金算入ができなくなります。
通知額と支給額が異なる社員が1人でもいた場合も、翌事業年度の損金算入となります。なお、損金算入してから発覚した場合、未払い計上ができないので、修正申告をする必要があります。
益金を減らす
所得を減らすために、益金に参入される金額を減らす方法も検討してみましょう。
益金のうち代表的なものは売上ですが、売上そのものを減らすのではなく、売上を計上するタイミングをずらすことが益金を減らすことにつながります。法人税の計算は事業年度ごとに行われるため、売上を計上する時期を翌年にずらすことができれば、当該年度の課税所得を減らすことになります。
売上の計上基準を、取引相手が納品された商品を検収した時点で売上になる「検収基準」にすれば、出荷時点で売上になる「出荷基準」や、納品時点で売上になる「納品基準」に比べて、売上計上のタイミングを後ろ倒しにすることができます。
特別控除を利用する
法人税の優遇措置を受けることができる特別控除の活用が、節税につながります。
・雇用促進税制
雇用促進税制としては、都道府県知事による「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」があります。地方創生の一環でもあり、本社機能の拡充・移転を実施する事業主が対象となります。認定されれば、雇用者を増加させた場合、1人につき最大90万円(2018年度以降に適用年度が開始する場合)の税額控除が受けられます。
・中小企業投資促進税制
中小企業投資促進税制は、設備投資にかかった費用を特別償却として計上したり、一定の税額控除を受けたりすることができる制度です。資本金額1億円以下の法人である中小企業者や、従業員数1,000人以下の個人事業主が対象です。
法人税法を把握しよう
会社を設立したら、法人税は避けて通ることはできません。
法人の義務として、法人税法にしっかりと目を通して、法人税のルールを把握しておきましょう。
2018年9月時点の情報なので、最新の情報ではない可能性があります。
港区の会社設立支援、税理士法人。Big4出身の公認会計士、税理士、元上場企業経理部長、大手ベンチャーキャピタル出身者などで構成され、スタートアップ支援に力を入れる。
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